根の治療とはどういうものなのでしょうか?
歯の構造
歯の真ん中には、管(くだ)状の空洞があります。その中に、温度や痛みを感じる神経や歯に栄養分を送っている血管が入っています。
レントゲン写真では、この管状の空洞は、このように黒い線として見ることができます。(右写真)
なぜ、根の治療をしなくてはならないの?
むし歯等が原因となり、神経にバイ菌が入ってしまい、中の神経が炎症を起こして痛みがでたり、神経が死んでしまったりすることがあります。
この場合、感染した神経を取り除き、神経の入っていた管の中を殺菌・消毒する必要があります。
そのまま放っておくと、バイ菌がどんどん増殖してものすごい痛みが出たり周りの歯茎が腫れたりします。
一度根の治療をした歯や知らないうちに神経が死んでしまった歯の、根の中にばい菌が住み着き、根の先に膿がたまってしまうことがあります。
この場合、神経の入っていた管を再度きれいに掃除して、殺菌・消毒をおこなわなければなりません。
治療の手順
- むし歯が大きくて歯が死んでしまい根っこが膿んでいる例
- 根の中に器具が入るように歯の頭に穴を開けます。(被せや詰め物が入っていれば外します。)
- 器具で根っこの先まで細い管の中をキレイに掃除します。管の中をお薬で消毒します。
- 管の中がキレイになったら、ばい菌が住み着く隙間がなくなるよう、最終のお薬を隙間無く詰めます。
根の治療は大体何回くらいかかるの?
■通院回数■
治療は一回では終わりません。
根の治療だけでも、 前歯 2~5回程度
奥歯 3~7回程度 の通院が必要です。
※歯の状態によっては、もっとかかることもあります。
■治療時間■
1回の治療時間も、最低30分くらいはかかることがほとんどです。
「え!?なんでそんなに時間がかかるの?」
と驚かれたかもしれません。
実は、根の治療は、詰め物などの普通の虫歯の治療に比べてとても難しく、じっくり時間をかけて、丁寧に行わなければならないのです。
理由1
治療中、神経の入っている管の中を直接見ることはできません。
治療中、下図の様な歯の断面を直接見ることができれば、とても楽なのですが、実際は根の治療中、歯科医師は上の写真のように神経の入っている管の入り口しか見ることができません。
しかも、この写真でははっきり入り口がわかりますが、大抵はもっと小さく見えにくいことが多いのです。
理由2
神経の入っている管は、とても複雑な形をしています。
神経の入っている管が、ものすごく細かったり、曲がっていたり、枝分かれしていたりすることもよくあります。
これは、実際の奥歯の神経を黒く染め出した写真です。
とても複雑な形をしていますね。
もしも、根の中を隅々まできれいにしておかなければ、根の中にばい菌が住み着いて、再びはれたり、痛みが出たりする可能性が高くなります。
直接見ることができず、しかも複雑な形の根の中を隅々まできちんときれいにするためには、とても慎重かつ丁寧に治療をおこなわなければいけません。
だから、回数も多く、時間もかかるのです。
また、正確な情報を得るために、何回かレントゲンを撮ったり、様々な機器を使って計測したりします。
治療中に気をつけていただきたいこと
1.絶対に、治療を中断しないでください。
根の治療中の歯は、本来外に出るはずのない弱い部分がむき出しになり、ばい菌を含んだ唾液にさらされることになります。
もし、治療を中断して長期間放置すると、歯の根の中にばい菌が入り込み中から歯を溶かしたり、根の先に大きな膿の袋を作ったりして、歯を抜かなくてはならなくなることがあります。
2.月に2回くらいは通院してください。
治療と治療の間があきすぎると、仮蓋がとれて根の中に唾液中のバイ菌が入ったり、中に入れているお薬の効果も薄れてきて、根の中で細菌が増えてきたりしてしまいます。
歯科医師の指示に従い、適切な間隔で来院してください。
3.治療中は、歯を休ませてあげてください。
病気になったときは、しっかり寝て休養をとらなくてはならないように、歯も治療中は休ませてあげる必要があります。
根の治療中は、食べ物はなるべく反対側で咬むようにしてください。
どうしても治療中の歯で咬まなくてはならない方もいらっしゃいますが、極力硬いものは避けるようにしてください。
もし、いつも通りに咬んでしまうと、歯が割れたり、仮蓋がとれたり、刺激のせいでなかなか根の病気が治らなかったりする可能性があります。
4.身体もなるべく休ませてください。
根の治療は、患者さんご自身の免疫力で歯が治ろうとするのを助けるのであって、最終的にはご自身の免疫力が低ければなかなか治りません。
根の治療中は、可能な範囲で以下のような生活をこころがけてください。
1)十分な休息・睡眠をとる。
2)規則正しい生活リズムをこころがける。
3)栄養バランスの良い食事をとる。
4)身体を冷やさない。
最後に・・・
予防が最良の治療
根の治療をしっかり丁寧に行えば、歯はずいぶん長くもちます。
でも、どんなに上手に根の治療をしたとしても、神経を抜いた歯は神経が生きている歯に比べて、根の先に膿がたまったり、歯が割れてしまったり等の問題が起こる可能性が高くなってしまいます。
これは、その患者さんの免疫力やかみ合わせの力、歯の形などが関係しており、必ず一定の確率で起こってしまいます。
本当に一番良いのは、神経が生きている歯をなるべく多く残すことです。虫歯で歯が痛み出したときには、神経を抜かなくてはならないところまでばい菌が入り込んでいることがほとんどです。神経を抜かなくても良いように、虫歯は痛くないうちに治療しましょう。
さらにもっと良いのは、虫歯ができないように予防することです。甘い物のダラダラ食べ(飲み)を控え、食後は丁寧に歯磨きを行いましょう。
定期的に、歯科医院でメインテナンスを行い、虫歯がないかどうかのチェックもうけましょう。